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東京高等裁判所 昭和39年(ネ)2737号 判決

被控訴人 武蔵野銀行

理由

《証拠》を総合すると、訴外マツダ皮革工業株式会社(以下訴外会社という。)は昭和三一年一一月三〇日被控訴人と手形取引契約を締結し、その共同担保として、昭和三二年二月二五日訴外会社所有にかかる原判決添付目録(二)の(1)(工場抵当法第三条により同目録(三)の(1)の機械器具備付)、同(二)の(2)(同上(三)の(2)の機械器具備付)、同(二)の(3)、同(二)の(4)の各工場建物に被控訴人主張の如き約定で債権極度額一、五〇〇万円の根抵当権を設定し、翌二六日浦和地方法務局草加出張所受付第二五二号をもつてその旨の登記を経由し、ついで昭和三四年六月五日右手形取引契約に基く債務の追加担保として右目録(一)の土地に債権極度額二、〇〇〇万円期間の定めのない根抵当権を設定し、同日右法務局出張所受付第一六六五号をもつてその旨の登記を経由したこと、被控訴人が右手形取引契約にもとづき訴外会社に貸し付けた金員のうち被控訴人主張の合計金四四、五〇五、二七六円の返還を受けなかつたこと、訴外株式会社大和銀行は訴外会社と昭和二九年九月二七日に手形取引契約、同三〇年三月一〇日に当座貸越契約、支払保証契約および債務保証契約をそれぞれ締結し、その共同担保として訴外会社所有にかかる前記目録(二)の(1)、(2)(工場抵当法第三条により同目録(三)の(1)、(2)の機械器具備付)の各建物に被控訴人主張の如き約定で債権極度額一、〇〇〇万円の根抵当権を設定し、同日前同法務局出張所受付第二九三号をもつてその旨の登記を経由し、ついで昭和三三年四月一日担保追加契約をもつて前記目録(二)の(3)、(4)の各建物に根抵当権を設定するとともに、同年五月一四日これらの債権極度額を一、五〇〇万円に増額して同日前同法務局出張所でその旨の登記を経由したが、右手形取引契約等にもとづき、訴外会社に貸し付けた金員のうち、合計七、〇〇一、五〇〇円が弁済未了であるところ、右銀行は昭和三六年三月二九日右債権を根抵当権とともに被控訴人に譲渡したことがそれぞれ認められ右認定に反する資料はない。

しかして、被控訴人が前記各根抵当権を実行するため、昭和三六年七月八日浦和地方裁判所越谷支部に競売の申立をなし、同年九月一日右裁判所において競売開始決定がなされたこと、これより先昭和三五年一月二六日訴外会社は右抵当物件を控訴人山上貿易株式会社に売渡し、同日その旨の登記を経由したことおよび控訴会社が前記目録(一)の土地については控訴人村居に対し、同(二)の(1)、(2)、(3)、(4)の各建物については控訴人窪田に対し、それぞれ被控訴人主張のような抵当権者に対抗し得る短期の賃借権を設定し、被控訴人主張のようにそれぞれその旨の登記を経由したことは当事者間に争いなく(但し争ある工場抵当法第三条による機械器具を除く)、右抵当物件について同年九月四日右競売開始決定を原因として競売申立の登記がなされたことは《証拠》によつて明認しえられるところ、民法第三九五条により抵当権者に対抗し得る建物の賃貸借の期間が抵当権実行による差押の効力の生じた後に満了した場合には、右賃貸借は消滅し、賃借人は法定更新を理由として右賃借権をもつて抵当権者に対抗できずまた同条による土地の賃貸借については、借地法第二条の趣旨からみて同法第六条の法定更新の規定の適用はないと解すべきであるから、本件において賃貸借の期間が被控訴人の抵当権実行による差押の効力の生じた後に満了すること右認定の事実から明らかな控訴人窪田についての賃貸借は昭和三八年三月八日、控訴人村居についての賃貸借は同四〇年三月八日をもつてそれぞれ期間満了により消滅したものといわなければならない。

そうすると控訴人村居、同窪田に対しそれぞれ前認定の各賃貸借の登記の抹消を求める被控訴人の請求は理由があり、この点に関する原判決の判断は相当であるが、控訴人山上貿易株式会社および同村居の両名に対し、右両名の間になされた前認定の賃貸借契約の解除を求める被控訴人の請求は訴の利益を欠くものとして却下を免れず、この点に関する原判決の判断は理由なきに帰し控訴人山上貿易株式会社の控訴および控訴人村居の控訴の一部はその理由がある。

よつて原判決主文第一項を取り消して右部分についての被控訴人の請求を却下…。

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